「不衛生な入れ歯を使用していると肺炎になるリスクが上がるって本当?!」
いつも当院のコラムをご覧いただきありがとうございます。 本日は、入れ歯についてのお話しです。
皆さんは入れ歯を綺麗にお掃除していますか?
「入れ歯にプラークが付いている」 「入れ歯から嫌な臭いがする」 という方は要注意です。 本日は、東北大学大学院歯学研究科が発表した、「入れ歯の手入れを毎日しないと過去1年間の肺炎リスクが1.3倍高かった」というとても興味深い研究をご紹介しながら、入れ歯のお掃除の重要性について触れていきたいと思います。
「誤嚥性肺炎ってご存知ですか?」
肺炎(誤嚥性肺炎)は、高齢者の方の死因の上位の疾患です。高齢になるにつれて、お口の周りの筋肉や舌など様々な機能が低下します。これらの機能は、お食事をする時になくてはならないものですので、機能が衰えてしまうと食べ物を噛んだり、飲み込んだりがスムーズに行えず、むせや食べこぼしを引き起こします。食事がしっかり行えないと、栄養を摂ることもままならず、体は弱ってしまいますよね。
お話を戻しますが、高齢者にとって「むせ」は深刻です。むせることで食道ではなく、気管に食べ物が入ってしまうと誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。
しかし、必ずしも誤嚥した時に誤嚥性肺炎になるわけではありません。
免疫力が低下している、あるいは咳き込む力が足りていない場合に誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
また、誤嚥性肺炎は食べ物だけでなく、入れ歯に付いたプラークも原因の1つになることがあります。
入れ歯を使用していると、舌や頬の筋肉などが制限されて、お口の中が細菌増殖しやすい環境になるため、誤嚥や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
入れ歯は噛むため、会話をするために必要不可欠なものですが、清潔に保たなければ体にとって悪影響を与えるものに変わる恐れもあるのです。
「入れ歯と誤嚥性肺炎の関係」
東北大学大学院歯学研究科が発表した、「入れ歯の手入れを毎日しないと過去1年間で肺炎のリスクが1.3倍高かった」という衝撃的な研究を交えてご紹介させていただきます。
研究の対象者は65歳以上の地域住民高齢者約7万人で
- 「入れ歯を毎日は清掃しない人において、過去1年間の肺炎発症のリスクが1.30倍、75 歳以上の人に限ると1.58倍高いということが明らかとなりました。」
- 「入れ歯の清掃を毎日行うことによって、地域在住の高齢者においても肺炎の発症を予防できる可能性が示唆されました。」
という発表がされました。 詳細は以下に記します。
※ 調査に参加した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者の内、義歯を使用している71,227人を対象に義歯の清掃頻度と過去1年間の肺炎発症の有無の関連を調べた。
- 義歯の清掃頻度は「毎日入れ歯の手入れをしていますか?」という質問に「はい」または「いいえ」で答えてもらった。
- 対象者71,227人のうち、過去1年間に肺炎を発症したと答えた人は2.3%、義歯を 毎日は清掃しない人は4.6%であった。
③ 義歯を毎日清掃する人では過去1年間に 肺炎を発症した人は2.3%であった一方、 毎日は清掃しない人では3.0%であった。
④75歳以上の人に限ると義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.9%であった。
- 毎日は清掃しない人では4.3%と肺炎発症のリスクが高くなった。
このような結果が出たそうです。
今回の調査は、要介護認定を受けていない方でしたが、要介護状態の方、施設に入所されている方は特に、ご自身で入れ歯を清掃することが難しいです。
そのため、ご家族の方が施設のスタッフにお願いすることも大切です。
また、要介護状態の方に限らず、入れ歯を使用している方は毎日入れ歯を清掃し、定期的に歯科医院で入れ歯の調整やメンテナンスを受けることも肺炎予防に繋がります。
※ 入れ歯の手入れを毎日しないと 過去1年間の肺炎のリスクが1.3倍高かった 〜世界で初めての一般高齢者における研究〜より引用
「入れ歯の清掃方法、知っていますか?」
しかしながら、入れ歯の清掃方法を知らない方も一部いるかもしれません。
(筆者の祖父母も知りませんでした)
「入れ歯の手入れはいつも使っている歯ブラシで流水下で磨く」という方も非常に多く、これでは衛生上よくありません。
⬇︎入れ歯の正しい清掃方法はこちらです。⬇︎
①就寝前に義歯用ブラシを用いて、流水下で磨く
②ポリデントなどの入れ歯専用薬剤を清潔なコップに入れ、お水でいっぱいにし入れ歯が浸るようにする
③朝起きて入れ歯を水で綺麗に洗い、装着する
この流れをなるべく習慣にしましょう。
また、「入れ歯の臭いが気になる」「しっかり汚れを落とせているか気になる」という方は、入れ歯用の洗浄剤などもありますので使用をおすすめします。
「入れ歯の清掃方法を知らない方が多い」という現状は、我々歯科医療従事者が変えていかねばなりませんね。
「肺炎予防以外にも!入れ歯は認知症予防に」
入れ歯を使用するメリットはまだまだたくさんあります。
入れ歯を入れることで、”認知症防止”になることはご存知でしょうか?
「噛む」ことは脳に刺激を与え、「判断する力」を作ります。 また、入れ歯を入れていても噛む力が足りなければ認知症は進行していきます。
そのため、入れ歯を使用している人は、入れ歯をしっかり装着し柔らかい食べ物だけでなく、お肉などの硬い食べ物も噛んで脳に刺激を与えなければなりません。
また、厚生労働省の調査により「65歳以上で自分の歯がほとんどなく、入れ歯を使っていない人は20本以上歯が残っている人と比べて、認知症になり介護が必要になる可能性が1.9倍高くなる」と報告されています。
歯を失った方は、すぐに入れ歯やインプラント、ブリッジなどで補い、自分でしっかり噛めるお口の中を作りましょう。
「脳の血流量が増える!おすすめの食べ物」
脳を活性化させるために有効な食べ物が発表されています。 それは「ガム」です。
日本チューイングガム協会の報告によると、「20歳〜85歳までの対象者30人にガムを噛んでもらい、噛む前と後の脳内の血流の変化をMRIで調べた結果、大脳の血流量が、ガムを噛むことで20〜40%も増加する」という結果が得られました。
驚くことに血流量の増加はすべての被験者に見られ、大脳以外の場所、小脳でも血流量の増加が見られたということです。
この研究により、ガムを日常的に噛んでいる人は”ボケ防止”に繋がるということがわかりました。
また頭が冴えたい!という方は通勤前などに噛むと良いかもしれません。ガムを噛む際には、糖が多いものは避け、キシリトールなどの虫歯になりにくいものを選んでくださいね。
「ボケ防止だけではない!ガムの効果」
ガムはボケ防止だけでなく、唇や頬などの筋肉を鍛える効果もあります。
小さいお子様や高齢者は唇の力が弱く、食べこぼしや飲みこぼしなどが見られることがあります。そんな方は、ガム風船を作る練習が効果的です。
口輪筋を鍛え、お口ポカンを改善することができますよ。
「噛むことを大切に。入れ歯をしっかり清掃して認知症予防に繋げましょう!」 入れ歯は使わなければ意味がありません。また、入れ歯を入れていても不衛生だと誤嚥性肺炎を引き起こしてしまう可能性があります。
入れ歯は毎日清掃し、清潔なものを使いましょう。 また、食べ物は30回以上噛み、認知症予防に繋げましょう。
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