東京入れ歯研究所が教える!災害時の口腔ケアと入れ歯の管理の重要性

いつも当院のコラムをご覧いただき誠にありがとうございます。本日は「災害時の口腔ケアと入れ歯の管理の重要性」についてのお話です。

災害時は特に高齢者の方にとって過ごし辛い環境です。また、お口の環境もとても悪化しやすいですが、ちょっとした知識があるだけで防げる口腔疾患がたくさんあります。

 本日は私たち医療従事者が災害時に皆様に「これだけは覚えておいてほしい!」ということをお伝えしていきます。

 「災害時は高齢者の誤嚥性肺炎が増加する」

誤嚥性肺炎とは、食事の時の誤嚥(食べ物、唾液、お口の中のプラークなど)によって生じる肺炎のことです。 食べ物などは通常、食道に入り胃に送られ消化をしますが、高齢になると機能が低下して、食べ物や唾液などが気管に入ってしまうことがあります。これが誤嚥性肺炎です。 ここで一緒にプラークなどの細菌が入ってしまうと、誤嚥性肺炎になってしまいます。

 「肺炎」の場合は熱が出たり、食事中にむせたり、濃い色の痰が出たりするため、「あれ?おかしい」と気づくことが多いのですが、誤嚥性肺炎は食事中にむせるくらいの症状なので「なんとなく調子が悪いな」と感じるほどで、気付きにくい疾患です。

特に災害時は、水不足や歯磨きが十分に行えずお口の中が不衛生になることから誤嚥性肺炎のリスクが悪化します。

歯磨きができないとお口の中でプラーク(細菌の塊)が長期間残ってしまい、飲み込んでしまうことで無意識のうちに誤嚥性肺炎のリスクが高まります。また、長期間の避難所生活などから免疫力が落ちてしまうことも大きな問題となっています。そのため、日頃から誤嚥性肺炎には気をつけて生活をしなければなりません。

お口の中を常に清潔に保ち、高齢者の方は特に定期的に歯科医院へ通院いただくことを呼びかけております。また、むせや咳き込むことが多い方は口腔機能療法などを歯科医院でお受けいただくことも大切です。

 「災害時の口腔ケアが広まったきっかけ」

1995年に発生した阪神淡路大震災では、6434人の死者が出ました。そのうち、家屋の倒壊による圧死や窒息死、つまり「直接死」は 5512 人。残りの 922人の方は肺炎、脳卒中、心筋梗塞などによる死亡でした。 大地震後に生き延びた方も、震災のストレスや生活環境の悪化などによってお亡くなりになられた方もいらっしゃいました。 また阪神・淡路大震災においては、この震災関連死は肺炎によるものが最も多く、223人の方が発症・お亡くなりになりました。 さらに、阪神・淡路大震災においては震災関連死の 81.3%が 65 歳以上の高齢者でした。

「阪神・淡路大震災と高齢者のお口の中の状況の関連性」

 阪神・淡路大震災では、長期における断水による影響から、飲み水が不足していたためお口の中、および入れ歯の清掃不備によりお口の中の細菌が増加した高齢者が多くいたと想定されます。 実際に、平成 7 年 1 月 17 日~3月 31 日の期間、神戸市内で行われた歯科医療救援活動 4269 人のカルテから得た傷病名を詳細に調べ、平成 5 年の厚生省患者統計(平時における歯科 医院の疾患の平均的な割合)と比較したところ、口腔内病原微生物の増加によると思われる疾患が有意に増加したという結果が出ています。

 ⭐︎阪神淡路大震災による口腔疾患の統計

歯牙疾患 1765人 

歯周疾患 414人 

歯性感染症 511人

口内炎 54人

歯・お口周りの外傷 85人 

義歯関連性疾患 1329人 

その他111人 

これだけ見ても、入れ歯に関する疾患が多いことがわかります。 入れ歯がお掃除できないことで起こりうる問題は、避難生活でどのように解決していけばよいのでしょうか。

 ※ 災害時の口腔ケアによる肺炎予防~神戸の経験から~ より引用 

「これだけは知っておいて!避難所での口腔ケア」

 災害時、歯磨きができない時は以下のような方法でお口の中をケアしましょう。

①少量の水、またはお茶などお砂糖が入っていない飲み物でうがいをする

 ②濡らしたガーゼやタオルなどで歯の表面をこすり、なるべく汚れを落とす また、唾液を出すこともお口の中の細菌を洗い流してくれるので効果的です。

唾液はストレスを抱えていたり、緊張などで分泌が減ってしまうので、唾液腺マッサージの方法を覚えておきましょう。

 <唾液腺マッサージの方法>

 耳の下や顎の下などを刺激するように、親指を中心に使い、軽くマッサージする。 (この時強く肌を擦りすぎないよう注意) 

①耳下腺 親指以外の四本の指を頬に当てて、上顎の奥歯くらいの位置から前歯に向かって円を描くようにマッサージする。

 ②舌下腺 親指だけを顎下の舌がある位置に当て、舌を押し上げるイメージで10回から20回程度優しく押しながらマッサージする。

③顎下腺 親指だけを顎の下の窪みがあるあたりに優しく当てて少しずつ位置を変えながら押していく。

 「避難所生活での入れ歯のお手入れ方法」

避難所で長期間生活する際に、入れ歯のお手入れができないことが非常に危険です。 いつ地震等の二次災害が起こるかわからない状況で、入れ歯のお手入れを一番に!という事は難しいと思いますが、断水が続いている状況でできるお手入れ方法をご紹介します。

 ・ウェットティッシュがあればウェットティッシュで汚れを拭き、その後入れ歯を乾かす

 ・ウェットティッシュがなく、断水でお水も使えない状況であれば、お食事以外の場面で入れ歯をお口に入れないようにする。(細菌を飲み込んで誤嚥性肺炎になるのを防ぐため) 

「災害に備えた準備物を常に用意しておきましょう」

 みなさんは”もしも”のために災害用避難グッズを用意していますか? 非常食やマスク、軍手などを準備している方は多いかもしれませんが、歯ブラシ等の口腔ケアグッズは見落とされがちです。

 普段からご準備いただきたい、災害に備えた口腔ケアグッズをご紹介します。

・歯ブラシ もしものために4〜5本ご用意しておきましょう。

 ・入れ歯専用シート 入れ歯をシートで清拭すると、入れ歯のプラークや汚れなどを綺麗に取ることができます。 水で洗い流す必要がないものもありますので、1つ持っていると便利です。 

・ペーパー歯磨き粉 こちらも水なしで使えるウェットティッシュタイプの歯磨き粉です。 指に巻きつけ、歯を擦って汚れを落とすことができます。

・マウスウォッシュ 歯磨きができない、お水も使えない状況で最も使えると言っても過言ではありません。 10〜15mlほどお口に含みうがいをしていただくとプラークを除去し、歯周病や虫歯を防ぐことができます。

 まとめ

本日は災害時におけるご自身で行える口腔ケアや非常グッズのご紹介を行いました。 長期間お口の中が汚れた状態になってしまうと、免疫力が低下し、口腔疾患だけでなく全身の疾患を引き起こすこともあります。 日頃から、災害時に備えて歯磨きグッズを準備しておきましょう。 

また、当院では完全オーダーメイドの入れ歯の提供をしております。 

お忙しい方にぴったりの「1日で完成する入れ歯」から、見た目を気にする方におすすめの「バネのない入れ歯」のご提供もしておりますのでお気軽にご相談ください。

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